1960年代中後期のロック生成期において、ロックンロールとロックを隔てる最大の要因はアート指標の有無にあったが、キャロルはその時期を参照体系にしないで済ませた。1950年代から1960年代前期にかけてのロックンロールを日本の1970年代に出現させたのがキャロルという名前で始めたのは凄いとおもう。解散してから海外に行き一人で活動してから、矢沢永吉は、著書『成り上がり』というタイトルが示すように、過酷な生い立ちに対する反骨の意志を動力にするという物語、すさんだ境遇の、逆に真実味を帯びるようなリアリティ感覚―を可能にするキャラクターだった。
だからこそ、矢沢及びキャロルは、1970年代という時期にメジャー化したうえで、『ロックである』との認証を得たほとんど唯一の存在になり得たのである、その頃の舘ひろしも負けじと挑戦したのであった。